風に向かって 壁に向かって

風に向かって書くように。壁に向かって話すように。日記や考え事の中身を書いたり、気に入ったものの紹介をしています。どちらかといえば個人的に。

2017-01-01から1年間の記事一覧

最愛の綾波レイ

‪最愛の綾波レイ。‬‪一緒には死んでくれない綾波レイ。‬‪「あなたは死なないわ。私が守るもの」 ‪今日見る月がとても青い。綾波。最愛の綾波。‬‪最後の吐息はオレンジ色で、僕の胸にばちゃっとかかった。 ‪ぜったい力を緩めちゃダメだ。逃げちゃダメって何回…

夕日を探して歩く

捨てられた教室の窓越しに夕日を見ていた。 「これは違うよ。」と彼女は言う。 「これも違うね。」と僕は返す。 いままで沈んだ夕日の数を数える。 遠くまで、歩いてきた。 夕日を探しにいこう、と彼女は言った。 それでおしまいにしよう、と彼女は言った。 …

砂のケーキ

砂でできたケーキにクリームを塗っている。 粉砂糖をしんしん振りかけて、四季それぞれのフルーツを載せて。 齧り付くな。舐めるだけ。 まだ何十年もあるのだから。

地球をゴミに

火曜日、地球を生ゴミに出してしまおう。 ピンクのゴミ袋をぎゅっと縛って。階段を二階分降って。 広々とした朝の部屋で、紅茶でも飲んでやろう。 焼却炉の火がみんな燃やし尽くす時間まで。

影が伸びる

ーあなたが初めて自分の異変に気付いた時のことを教えて下さい。 はい・・・。七月の二十九か三十日だったと思います。風があって気持ちいい日でした。 友達と二人で学校の帰り道のとても長い坂を登っていたんです。 ー時間は?いつ頃でした? 六時半かその…

日曜日の電車

晴れた日曜日の電車のおおらかさ。 いくつものさざめきにひかりが差し、座席にはうっすらと涼しい影がかかる。 子連れのばかどもにも、酒に酔ったごみのような大人たちにも、駅名を唱和するきちがいにも、さるのようにはしゃぐ女の子たちにも。 みなさん、ど…

みんながボールを蹴るのをやめた日

みんながボールを蹴るのをやめた日。 ピカピカとした太陽がすこし穏やかになりました。 いつもより増えたひとりごとが、夏の雲にかわりました。 男の子と女の子が静かに手を繋ぎました。 図書室のカレンダーがうたた寝をはじめました。 今日という日は、どう…

夜を待つ

夕日が沈む 胸の中で誰かが歌う 夕日が沈む 僕は耳を澄ます 夕日が沈む かすかな言葉は聴き取れない 夕日が沈む 僕は夜を待つ 夕日が沈む 空の端が曖昧な色に分かれる 夕日が沈む 太陽の行く先をずっと見ている 夕日が沈む 新しい夜がそっと背後に立つ

誰も呼ばないで。

誰も呼ばないで。私の名前を呼ばないで。 少しだけ死んだままでいたいの。 置き去りにされた夜の海みたいに。

結婚式の写真の中で

結婚式場のスクリーン。 馬鹿みたいにピースサインをしている仲間が写っていた。 今よりも若い僕達。 写真のなかの僕らは、今の僕らよりもずっと友達であるように見える。 ただそれだけ。

女の子が死ぬ話

誰の心にも、ひとりの死んだ女の子がいる。 十五歳で死んだ女の子。 病気なのか事故なのか、それとも自分で死んだのか。理由はひとりひとり違うのだろう。 いつか、突然女の子がひとり死んでいたことに気づく。誰にも看取られずに。 彼女の死から何年も経っ…

もし明日隕石が落ちてきたら

もし明日隕石が落ちてきて、地球が滅ぶとわかったなら最後はどこで過ごそうか。 昔からずっと考えてる。 子供の頃はけやき並木。図書館に続く木漏れ日の中。 背が伸びきった頃は弓道場。虫の鳴いてる矢道の芝生。 怠け者だった頃ならサークル棟の部室。楽譜…

人間は亡くなったりしない

「亡くなる」という言葉が嫌いだ。 亡くなったんじゃなくて、死んだんだろ?と言いたくなる。 死の持っている残酷さ、荒々しさ、無意味性に鈍感になりたくはない。 人間は亡くなったりしない。死ぬだけ。