被害者の目と手
職場に新しい人が異動してきた。人減らしを行った隣の職場から。
にこにこと笑う、優しそうな男の人だった。一緒にお茶を飲む。僕もにこにこと笑う。
「会社の都合であっちこっち遣られて、大変ですね。」
「いえいえ。不慣れでご迷惑をおかけしますが、新しい所でがんばります。」
組合の人は言う。「いままで一生懸命会社に尽くしてきた人には、最大限の保障と説明をしろ」。みんなも口々に言う。自分が今までどんなに一生懸命仕事をしてきたか。部署を移動することが、どれだけ自分の生活を壊してしまうか。
うちに新しい人が異動してきた。つぶれそうな部署がある限り、これからも新しい人が増える。自分の部署が持てる人件費には余裕が無い。
これで僕の部下が正規の待遇を得る可能性がほぼ消えた。
異動してくる人と同レベルの仕事をし、彼らよりもウチで長く働いていた人たち。
彼はにこにこと笑う。僕もにこにこと返す。
どうしてみんな、自分を被害者に置きたがるのだろう。
どうしてみんな、自分の手が何を奪っているか見ないのだろう。
『私の目は被害者の目 私の手は加害者の手』 鬼頭莫宏
風に向かって書けたら
「風のために何かが書けたら、どんなに素敵だろう」
これは村上春樹だったろうか。
少し前に30才になった。
一日に考えたこと、一日に感じたこと。このまま誰にも何も話さずに過ごすのは、正しいことなんだろうか。
この疑問から、ブログをはじめることにする。
ここに書くようなことは、ホントならば壁に向かって話すべき事だ。
そんなことばかりが増えていく。
まだ風のために何かを書くことはできそうに無い。