秋の虫、美しい孤独、美しい惨めさ
今日、初めて家で虫の声を聴いた。
もしかしたら今日以前から鳴いていたのを気づかなかっただけかも知れないけれど。
思い出したのが、
しのびやかに遊女が飼へるすず虫を殺してひとりかへる朝明け 若山牧水
の歌。
惨めな遊女のちっぽけな鈴虫を殺す、惨めな俺、という歌。
そして惨めな者同士が、お互い寄り添うことが出来ない惨めさの歌。
この歌がとても好きなのは、この二人の孤独、惨めさが美しいからだと思う。
すこし冷たい朝の空気、あらゆる体温とあらゆる音を拒んだ静謐な孤独がここにある。
素養と教育の不足のせいか「大御所」の短歌を退屈に感じてしまうことが多い。
でもこの歌を見て、やるじゃん牧水、と素直に思った。