風に向かって 壁に向かって

風に向かって書くように。壁に向かって話すように。日記や考え事の中身を書いたり、気に入ったものの紹介をしています。どちらかといえば個人的に。

名前のない怪物

個人的な、優れたゲームやアニメの曲の評価軸の一つとして「どれだけコンテンツの中身を表現しているか」という要素がある。

極端な話、この曲だけで中身の主題が十全に理解できる!!、というのはすごいなぁ、と思うのだ。

(一番すごいと思ったのがアニメ版「ぼくらの」の主題歌「アンインストール」。これを聴けば漫画読む必要ないんじゃない?ってくらい作品の主題が詰まってる。)

 

アニメ PHYCHO-PASSのエンディング曲「名前のない怪物」も主題とピッタリの曲。

もちろん浦沢直樹の「Monster」に出てくる連続殺人犯がモチーフ。

 

この曲の海外素人さんによる英語ヴァージョンが、とてもよくできていて感心した。

原詩をそのままで訳すと、むしろ主題から遠ざかってしまう現象がよくあるけれど、

この人の詩は意訳ぎみに作りながら、むしろ本編の主題に近づいている。

極端に言えば、原詩よりも作品の主題に近いんじゃないだろうか?

ということで気に入ったので英語→日本語と再翻訳してみた。

 

ちなみにPHYCHO-PASSってこんな話

・身体、精神の執拗な監視により、犯罪を起こしうる不健全な人間を先回りして裁く未来の超管理社会が舞台

・凶悪犯罪を追う刑事たちが主人公

・狂った社会の巨大な正義と、自分の感じる小さな正義

 

このアニメ、主人公も敵方もめっちゃ本を読みます。

シェイクスピアからルソー、コンラッドから寺山修二、オーウェルやギブスン、はてはパスカルなんて専門の学生以外読まんわってやつまで。あらかじめ裏切られた革命、とか今手に入らんし。

 

 

ちなみに下の訳で一番好きな部分は

Come to light, the “right” that makes them higher 

To keep them down before they open fire

の部分。

 

 

 

 

『Monster Wthout a Name』 JubyPhonic 英訳

             Yama 日本語訳 

 

Fairy tales I knew  懐かしいおとぎ話が 

Right before me, they died 死に絶えたその時のこと

Brick and rooms of white and red 赤と白の煉瓦造りの部屋の中

I couldn’t sing or even try 何も歌えないままの私がいた

Cutting the hazy covered night 靄がかった夜空に刃を振るうように

The scarlet moon is burning high 赤い月は高く弧を描く

My open eyes, look at me now 鏡の中、私の眼が私を見ている

Don’t try to turn or run away 目をそらさないままで

 

Cried out behind a cage of black and iron 黒い鉄格子の内に燃える炎

My life began, I’m born inside a fire そこが私の生まれた場所

They pray “forgive me of my many sins” 善き人は神に許しを請う

And if you want, I’ll give you what you most need だから私が与えよう

Come to light, the “right” that you desire 私の欲するがままの善きものを

Destroy them all before they open fire みんなを壊してしまわないと

                    みんなが私を撃ち殺す前に

The karma game still has a price to pay 生きるとは殺すということ

So as you move today, the monster goes along だから今日も生きていく

Without a name 私の中の名前のない怪物とともに

 

Ringing my ears, I couldn’t think 鐘の音が鳴りやまない夜

The wired fence waking the dead 鉄条網のフェンスが死者を呼び覚ます

A song I heard so long ago 昔聴いたあの曲が

But how’d it go or sound back then? 今聴こえてくるのはどうして?

Still pouring down the rain outside 外はまだ雨が止まない

How can I see when I’m so blind? なにも見えない外を見つめている

Tearing away, look at it now 君にもわかるでしょう?

It’s growing bigger every day 私の中の怪物が大きくなっていくのが

 

Bring down the rain and paint me black as iron 全てを鉄格子と同じ色に染める雨

My life could end and leave me undesired この生は望まれないもの

I’m breaking down as they all gather ‘round 私を裁こうとする人の群れの中で

The people acting now like they can judge me 私がどんどん壊れてゆく

Come to light, the “right” that makes them higher だから引きずり降ろさなくちゃ

To keep them down before they open fire 正しさの高みの上から石を投げる彼らを

The scar remains  but I don’t care the same  みんなが私を打ち殺す前に      

So as you move today, the monster goes along 私は生き抜いてみせる

Without a name 名前のないの怪物を抱えて

 Ah god on high speaks so low いと高き神が冷たい声で告げる

as he shows our one true world このたった一つの世界の中で

 

以下繰り返し。