そして僕らは平凡に幸せになった
大変遅れながら、ジャンプで連載していた西尾維新 原作の漫画「めだかボックス」の最終巻を読んだ。
ジャンルは「シュール能力バトル漫画」
文学好きで通してる身としてはおおっぴらに言い辛いが、自分はこの作者さんの10年来の大ファンだ。
この人の物語の終わりはいつも決まっている。
天才的だったり、強烈な人格を持っていた人間が、物語の中で人間として成長する。
そして成長と引き換えにその天才的な能力だったり、個性を失って普通の人になる。
彼らは『普通の』『幸せな』人になる。
これが少しさびしくて、僕はとても好きなのだ。
作中の台詞曰く
「苦労しなければ手に入らないものがあるように、満たされることで失うものもある」
大人に成長すること、普通に幸せになること。それは寂しいことだ。
嘘しか言わない虚無主義者が、恋人を大事にする立派な社会人になり、
この世を手にしているかのように楽しげな少女ハッカーが、ただの愚鈍な女になり、
同級生の口をホチキスで縫い付けた女が、平凡な可愛い彼女になり、
息をする様に人を殺した少年が、誰も殺さないままで死んでいく
現実でもよく似た例はあるんだろう。
切れそうな位危うげで綺麗だった女の子が、ただの快活な美人になり、極めて自由だった男の子が、極普通のお父さんになる。誰にもそれを非難する事は出来ない。
『子供の頃使えた ささやかな魔法が使えなくなる』、それだけの話。
この人の作品を読み終えるたび、自分はこれまでどんな人間に成ってきて、これからどうなるのだろう、と思う。
以下、めだかボックスのなかから、自分のお気に入りの台詞集
《差別するなよ。悪い奴を差別
《 めだかちゃんは、人を疑うことを知らないんじゃない 。人を信じることを知ってるんだ! 》
《 たとえばの話だけどさあ「人生はプラスマイナスゼロだ」――って言う奴いるじゃん。エリートでも喜んだり悲しんだりするとか、幸福な人間もそれ相応の大変な苦労を積み重ねているとか、だから人間はみんな平等だって言いたいんだと思うけど。でも「人生はプラスマイナスゼロだ」って言う奴は決まってプラスの奴なんだ 。》
この漫画のうちのホンの一部だけでも、自分の人生の糧に出来たらすばらしいと思う。
ホントに好きなんだ。