夕日を探して歩く
捨てられた教室の窓越しに夕日を見ていた。
「これは違うよ。」と彼女は言う。
「これも違うね。」と僕は返す。
いままで沈んだ夕日の数を数える。
遠くまで、歩いてきた。
夕日を探しにいこう、と彼女は言った。
それでおしまいにしよう、と彼女は言った。
きっとそこには、幸せだった頃の僕らがいるのだ。
二人で遠くまで歩く。
ブランコの上を横切る夕日、海を黒く染める夕日、紙コップに落ちる夕日、眠るラクダを包む夕日。
「これは違うよ。」と彼女は言う。
「これも違うね。」と僕は返す。
教室には柔らかい影が差している。
「もういこう。」と彼女は言う。
「そうだね。」と僕は返す。
彼女はじきに出ていく。
僕はまだ立ち去らない。