風に向かって 壁に向かって

風に向かって書くように。壁に向かって話すように。日記や考え事の中身を書いたり、気に入ったものの紹介をしています。どちらかといえば個人的に。

みんながボールを蹴るのをやめた日

みんながボールを蹴るのをやめた日。

ピカピカとした太陽がすこし穏やかになりました。

いつもより増えたひとりごとが、夏の雲にかわりました。

男の子と女の子が静かに手を繋ぎました。

図書室のカレンダーがうたた寝をはじめました。

 

今日という日は、どうしてこんなにやわらかいんでしょう。

 

世界中のみんながボールを蹴るのをやめた日。

鉄格子の中の人が初めて家族のことを思い出しました。

毛むくじゃらのピアニストが鍵盤にぽーんと指を置きました。

草原のライオンが遠い雨の匂いに気づきました。

少年はラブレターを書く手を止めました。

 

今日はもう、誰もボールを蹴ったりしないのです。

ボールはゆらゆらと揺れています。

ゆらゆら、ゆらゆら、楽しそうに。

太陽がすこし穏やかになった日のことでした。