僕たちは、なぜ豊かに暮らしているのか
会社の会談の踊り場で製造の親方と話した。「はやくイイ物を開発して、地元の工場を盛り上げてくれな。」。
日本拠点の工場には仕事がなく、人余りだと聞く。
ウチの部署には二つの流れの製品がある。
一つは日本の工場が作った日本向け製品。
一つはアジア拠点で現地従業員が作成した海外向け製品。
僕がテストしたところ、この二つには何の性能差も見られなかった。総ての製品で。
海外拠点の労務費なんて、日本の数分の一に過ぎない。
僕らはなぜ他の国の人より豊かに暮らしているんだろう?
僕らは何を持って自分の豊かさを正当化しているんだろう?
職業に貴賎なし、とはよく言うけれど。
発展途上国の人間と同レベルの仕事をしている人が、先進国に生まれたってだけで豊かに暮らすのは、恥ずべきことなんじゃないか。
中国人の給料が上がり、日本人の給料が下がる。
グローバル化が進む限り、流れは止まらない。
先進国:10の貧しさ、発展途上国:90の貧しさ だったのが
先進国:20の貧しさ、発展途上国:65の貧しさ、になるだけ。
日本人の多くは認めないだろうけれど、世界はより平等に、幸福になりつつある。
不幸になるのは、いままで理由も無く豊かだった人だけ。
工場のだけじゃない。将来は僕らみたいな研究開発だって現地化するだろう。
製造業だけじゃない。医療、インフラ、農業、サービス、ありとあらゆる分野が、別に日本人でなくとも良くなるんじゃ無いだろうか。(取って代わるのがロボットやITかもしれないが。)
「お前らはどういう理由があって、そんなに豊かに暮らしているんだ?」
我々全員が、そう問われている。