誰も永遠には生きない その1
入院中の祖母に付き添った。
吸い口から水を与え、口に食事を運ぶ。
食べ終わったら、入れ歯を外してうがいをさせ、口内に食べカスが残っていないか確認する。
口を動かす祖母は、どうにもボーっとしていて、僕のことを認識していない風情だった。痛み止めか何かの影響か。
食事中にいとこの小学生二人が来る。高学年の長女はずいぶん背が大きく、すらっとしていた。
二人に祖母の食事を手伝うように言うが、怖がってスプーンを持とうとしない。
もにゅもにゅと緩慢に動く口、口の端からのよだれ、オムツと老人独特の臭い、表情の無い顔、入れ歯を外した時の皺だらけ口元。
要は「老い」に対しての生理的嫌悪感や恐怖心、それらに打ち勝つ力がこの子達にはまだ無いんだろう。責めはしない。
途中で僕の姉も着た。祖母にゼリーを食べさせ、1-2時間ほど話をして都内に帰る。
今後も病院通いを続ける僕の母親と叔母の体力を温存するため、その日の夜間付き添いは僕がやることにした。2時間ごとに床ずれ防止用の姿勢変更と水分補給をするだけ。
夜間付き添いを申し出た時、親戚一同がとても感心していた。
でも、このまま実家に帰ったら、僕は母親が僕の分のご飯を作る手間を増やしに帰ってきただけだろう。
父親は僕の夜間付き添いをあからさまに止めさせたそうだった。
「感謝なんかされない」「(錯乱した祖母が)首をしめられた、なんて言い出したらどうする?」
どうも、父親、叔父世代の人間は介護=「女の仕事」と考えていて、それを男がすることを良く思わないようだ。
世の中意外や意外。