風に向かって 壁に向かって

風に向かって書くように。壁に向かって話すように。日記や考え事の中身を書いたり、気に入ったものの紹介をしています。どちらかといえば個人的に。

いきすぎた友達

柴田聡子「いじわる全集」を購入。

収録されてる『いきすぎた友達』が素敵過ぎてエンドレスで聴いてしまう。

ぽかんとした歌い口、繰り返すシンプルなフレーズ。

強烈ではないが、心地よい日常的なイメージがぽんぽんと浮いてくる。

 

いじわる全集~初回限定盤

いじわる全集~初回限定盤

 

 

柴田聡子-いきすぎた友達MV

https://www.youtube.com/watch?v=GiVMtuTvO5g

 

’’わたしたち いきすぎた友達 盆も正月もいっしょ’’ という二人組。

なんとなく女友達二人を想像していたが、どうも男女のようだ。

 

この二人の関係性を色々想像してしまえるのがいい。

 

幼馴染なんだろうか。

’’タンスの中に隠れてきっかけは恐竜図鑑”

’’人形の真似がうまいから あのパンダの役は’わたしが’’

 

仲が良いが、心地よい距離感。

’’離れがたくはあるけれど 離れてしまえばそれはそれで あとはたのしい約束をまいにちまいにち電話でしよう’’

’’あれは台北旅行の計画 遠出するのはいきすぎてる 何度も言ってるでしょ’’

 

後半では、二人のイメージに変化が・・・? 単純な幼馴染じゃない!?

’’服を着る前になにをするかわからないのなら 教えようか 素直にわからないと言ってくれたら’’

’’わたしたち知らなくてもいいことだらけだと思うんだけど’’

’’おとなりさんのまぼろし信じて’’

 

人によってすごく解釈の幅が出そうなところがまたよい。

こういうのを豊かなイメージを持つ歌というべきなんだろう。

 

’’きみんちの父さん母さんのウォーターベッド踏みつけて 海でも湖でもないここでこっそり水遊び’’のくだりが一番好きだ。

 

お勧めの一枚。

 

Call past rain

ずっと雨が降っている。

何日も何日も降っている。

 

眠たくてしょうがないので一日寝て過ごす。

雨の音がする。

 

のそっと起きたとき、この曲が聴きたくなった。

聴いてると、いつもより深く呼吸が出来そうな気がする。

澄んだ音、繰り返す細い声、儀式めいた雰囲気、真摯な感情、曖昧なビジョン。

曲のタイトルが一番好き。

 

World's end girlfriend - Call Past Rain


Scenery - YouTube

 

『声に出したら消えてしまいそうだから』

『声に出したら忘れてしまいそうだから』 

 

 

 

 

 

Still Alive

 

アクションパズルゲームPortal」の挿入歌が気になって仕方ないので、

自分で訳してみた。(劇中の固有名詞は訳さず。)

僕らが何をしても、サイエンスは進み続ける。 

僕らが死んでも進み続ける。

死んだ人を忘れ、新しい銃を作りながら。

 


Portal - 'Still Alive' - YouTube

 

「Still Alive」

This was a triumph.          すばらしい成果です。
I'm making a note here:          実験ノートに書いておきましょう、

HUGE SUCCESS.                                 「大成功」って。
It's hard to overstate          私がどんなに満たされているか、     
My satisfaction.            あなたにわかりますか?
Aperture Science           
We do what we must          しなきゃいけない事を成しましょう。
Because we can.            「可能だから」これが全て。 
For the good of all of us.          全てはみんなのために。
Except the ones who are dead.   死んでしまった人たち以外のみんなのために。

But there's no sense crying      ミスを悔やんでも仕方ありません。
Over every mistake.
You just keep on trying          実験を繰り返すのです。
Till you run out of cake.         ケーキが無くなるまで。
And the Science gets done.     「科学」を進めましょう。
And you make a neat gun.       素敵な銃を作りましょう。
For the people who are         生き続ける人達のために。
Still alive.                生き続ける人達のために。

 

I'm not even angry.                                怒ってなんかいません。
 I'm being so sincere right now.     今はとってもすっきりした気持ちです。
Even though you broke my heart.    あなたに踏みにじられたことも。
And killed me.              あなたに殺されたことも。
And tore me to pieces.        あなたは私を引き裂いて、
And threw every piece into a fire.     火の中に投げ込みました。
As they burned it hurt because     でも、燃えていく苦しみの中ですら、

I was so happy for you!         あなたの事が誇らしかった。
Now these points of data       実験データのグラフを見てみなさい。

Make a beautiful line.         点と点をつなぐ曲線の、美しいこと。      
And we're out of beta.        これでベータテストが出来ますね。
We're releasing on time.       すぐにでも配布しましょう。
 Think of all the things we learned   学んだ全てを役立てましょう。

For the people who are         生き続ける人達のために
Still alive. 
(中略)

And believe me I am still alive      私はまだ生きています。
I'm doing science and I'm still alive      科学を進めるため、生き続けています。
I feel FANTASTIC and I'm still alive     生きるってすばらしいこと。
While you're dying I'll be still alive     あなたが死にゆく時でさえ、
And when you're dead I will be still alive   あなたが死んだ後でさえ、
                   私は生きていくでしょう。

Still alive                                              生き続ける人達のために。
Still alive.              全ては生き続ける人達のために。

誰も永遠には生きない その2

実家に戻りご飯を食べて、風呂に入ったあとに再度病院へ。

祖母の夜間付き添い。

 

祖母の病室へついた途端、叔母が言った。

「お前には付き添いは無理かもしれない。」

 

どうも祖母の様子が尋常ではないとのこと。

いきなりうわ言を言って、ぞっとする大声量で笑い出す。

うわ言の内容は「花さかじいさん、花さかじいさん」とか、意味不明。

 

うわ言だけなら別に害はない、と叔母を帰らせて、付き添いへ。

正直に言えば、かなり怖い。

 

叔母が帰ろうとすると「○○ちゃん!!」と叔母の名前を大声で連呼する。

薬のせいかはわからないが、祖母は急に子供のようになってしまっている。

 

明かりが消えてから2時間、最初の姿勢変更をする。

看護士さんに手伝ってもらい、祖母の体を持ち上げたり引っ張ったり。これを怠ると、悲惨な床ずれが出来るらしい。

 

6時間後の姿勢変更が終わり、看護師さんが帰ると、急に祖母が騒ぎ出した。

叔母の名を呼んでいる。

どうも僕のことを孫だと認識できていないようだ。

 

話しかけても耳を貸さないので、歌うことにした。

歌を選択した理由は良くわからない。眠くて頭が働かなかったし。

曲目は「浜辺の歌」。これも理由不明。

 

一番を歌い終わる頃には、祖母は静かになっていた。

きょとん、とこちらを見ている。

その後、急に理性的な表情になった。

知らない人の前で騒いだことを恥ずかしがっているような素振り。

 

その後は何事も無く、朝を迎えた。

 

交代に来た叔父が僕の顔をみて驚いていた。

「男の癖に夜間介護までするとは、お前はなんて偉いんだ。」という趣旨。

 

 

自分としては、一定以上の犠牲を伴う介護をするか、入院費のなどの金銭面での負担をする以外に、祖母の役に立つなんてことはありえないと考える。

どうにも僕は、姉のように1時間かそこら優しい言葉をかけてそれで帰る、みたいな情緒的なものに価値を感じ辛い。

第一、僕や姉の顔すらわかっていないボーっとした祖母に優しく声をかけてもなぁ、と。

叔父にはそういうことは言わなかったけれど。

 

あと、言わなかったことがもう一つ。

祖母に付き添ったのは、祖母や介護中の母のためだけでもない。

「死」に近づいた人間と一夜を共にするというのがどういう事なのか。

それが知りたかった。

 

『誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も永遠には生きない』  

 

誰も永遠には生きない その1

入院中の祖母に付き添った。

 

吸い口から水を与え、口に食事を運ぶ。

食べ終わったら、入れ歯を外してうがいをさせ、口内に食べカスが残っていないか確認する。

 

口を動かす祖母は、どうにもボーっとしていて、僕のことを認識していない風情だった。痛み止めか何かの影響か。

 

食事中にいとこの小学生二人が来る。高学年の長女はずいぶん背が大きく、すらっとしていた。

二人に祖母の食事を手伝うように言うが、怖がってスプーンを持とうとしない。

 

もにゅもにゅと緩慢に動く口、口の端からのよだれ、オムツと老人独特の臭い、表情の無い顔、入れ歯を外した時の皺だらけ口元。

要は「老い」に対しての生理的嫌悪感や恐怖心、それらに打ち勝つ力がこの子達にはまだ無いんだろう。責めはしない。

 

途中で僕の姉も着た。祖母にゼリーを食べさせ、1-2時間ほど話をして都内に帰る。

 

今後も病院通いを続ける僕の母親と叔母の体力を温存するため、その日の夜間付き添いは僕がやることにした。2時間ごとに床ずれ防止用の姿勢変更と水分補給をするだけ。

 

夜間付き添いを申し出た時、親戚一同がとても感心していた。

 

でも、このまま実家に帰ったら、僕は母親が僕の分のご飯を作る手間を増やしに帰ってきただけだろう。

 

父親は僕の夜間付き添いをあからさまに止めさせたそうだった。

「感謝なんかされない」「(錯乱した祖母が)首をしめられた、なんて言い出したらどうする?」

どうも、父親、叔父世代の人間は介護=「女の仕事」と考えていて、それを男がすることを良く思わないようだ。

世の中意外や意外。

愛情とは何か

祖母が転倒、骨折した、との報を聞いて病院へ。

電話口の母親の話では、今にも死んじゃいそう、と言わんばかりの様子だったが、実際に顔を合わせるに、どうもそこまでの話ではないようだった。

 

薬のせいか、痛みのショックか、表情に乏しく、動きが緩慢な祖母。

動けないので、吸い口で水を飲ませてやり、食事はスプーンで食べさせる状態だったが、それなりに食欲はあるようで、安心した。

 

電話口の母は、薬による内臓へのダメージからの容態の悪化を病的に怖がっていた。

「いつ死ぬか、わからない」とヒステリックに繰り返していた。

 

実際病院に言ってみると、祖母には食事制限もかかっていなかった。

食事制限なし=薬や塩分等をろ過、分解する肝臓、腎臓への負担を考えなくていい状態  だろうから、母の心配は杞憂なんだろう。

実際聞いてみれば、母の懸念はお医者さんに言われたことでなく、自分の考えだそうだ。

正直、どっと疲れる。

 

まぁ、実の母親が怪我したんだし、大目に見るべきだろうけど。

 

肉親のことになると理性が全く働かない性格、不安に対する耐性が低く、すぐ誰かにぶちまけてしまう、こらえ性のなさ。

この二つを「愛情深さ」と勘違いしていることをいつか指摘しなければ、とは思う。

弟に医学部行きを強制した「愛情」のことについても。

 

母親のこういう面を見る時、いつも「愛情とは何か」を疑問に思ってしまう。

取り敢えず指摘すべきは今ではない。

 

こどもの夢と憂鬱

連休返上しての学会発表が終わり、アジアでの事業立ち上げ用の新製品も、今日初めてまともな形になった。

なんて書くと出来る人っぽいけれど。ただ平々凡々と毎日を生きているだけではある。

 

ちなみに学会では、僕らの新手法のうわさが回っているらしく、発表時間中だけでなく、時間後にも、質問やよその企業の挨拶がやたらきた。

 

今日でひと段落。

これは小学生の頃に想像した「なんかすごい発見をして、みんなの前で格好良く発表する僕の図」を叶えたことになるんだろうか。

多少細部が歪んだり、色が褪せたりしたとしても。

 

正直言って、ばかみたいだな、とは思う。

 

もちろん誇りを持って仕事をやってはいる。

取り敢えず明日僕がなんかで死んじゃって、神様の前でスピーチをする破目になったら、こういうだろう。

「自分は希少物質の代替技術の開発をやってきました。近い将来、この物質を求める人は減るでしょう。

未来のどこかにある、人間が特定の資源で困窮したり、争ったりしなくて済む社会の建設に少しでも貢献できたでしょうか。」

 

大げさではない。僕らのやってることは卑小でささやかではあるけれど、結局のところはそういうことだ。(会社の第一目的はもちろんお金だけど)

 

確かに社会に役立っている。だとしても、ばかみたいだ。

 

どうしてこんな風に感じるんだろうか。

 

1  材料開発なんてマニアック過ぎて、業界の人以外、興味ないから
2 仕事が地味だから

3 合コンでモテなそうな仕事だから

4 仕事上の成果と自分のアイデンティティーを混同したくないから

5 どれだけ学会で注目されても、製品が売れなければ意味が無いから。

6 子供の頃の夢を叶えることなんて、世間でいうほどの価値がないから

7    子供の頃に想像していたものが、色の若干褪せた現実になったから

 

ちなみに1ー3はどうでもいいな。割と好きでやってるし。

 

『明日の朝もとても早いのに 眠ることさえ忘れてしまう様な 生きがいがこんなものだなんてね うそみたいだろう』大森靖子